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Warfarin Controlのためにこれまで利用されていたTT(トロンボテスト)と、これからの指標となるPT−INRについて、
私が理解しているところの現状と、検査上の注意点についてお話させて頂きます。
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PTは1935年にQuickにより紹介された検査法で、クエン酸ナトリウム加血漿に組織トロンボプラスチンを加え、
フィブリンが析出するまでの時間を測定するもので、血液凝固反応のうち凝固外因系と凝固共通系の状態を反映します。
凝固因子では、第VII因子、第X因子、第V因子、第II因子(プロトロンビン)の活性とフィブリノーゲンを反映します。
これらの凝固因子のうち第VII因子、第X因子、第II因子は肝臓で産生されるVitamin K (VK)依存性蛋白で、
VK拮抗作用のあるWarfarinの服用により、前駆蛋白のカルボキシル化による修飾が障害され
protein induced by vitamin K absence or antagonists (PIVKA)の形で産生されるため、
カルシウムに依存する凝固反応系に参加できずそれを障害するためPTが延長します。
PTは感度を上げるために様々な改良を加えられ発展してくことになります。
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PTは様々な改良を加えられ発展した結果、用いる組織トロンボプラスチンの種類*1も様々となり、
試薬の違いや測定機によって凝固時間(秒)に差が出るという事態を招きました。
この差はそのまま施設間差として、とくに多国間移動の多いヨーロッパで問題視され、正常プール血漿を用いた活性値(%)方式を考案したものの、
施設間差を解消するには至りませんでした。この流れがPR−INR方式へつながっていきます。
*1 ウサギ脳由来、ヒト胎盤由来、サル脳由来、ウシ脳由来、リコビナント等
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一方、PT検査法は凝固時間(秒)が短く、Warfarinのコントロール域幅が狭いばかりか、検体中の凝固因子活性低下が反映されにくいため、
Warfarinのコントロールに都合の良い方法、すなわちトロンボテスト(TT)が開発されました。
TTは施設間差があまり問題意識に上がらなかったわが国で広く普及しました。
TTはウシ脳由来組織トロンボプラスチンと硫酸バリウム吸着血漿(第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子を除去したもの)、
さらに至適量のカルシウム塩で調整された複合因子測定用の試薬で、出血傾向の予知やWarfarin療法のコントロールに適したものです。
Owrenの提唱するWarfarinの治療域の10〜25%は、凝固時間(秒)にして70〜120秒とPTの25〜40秒と比べて長く、それだけコントールしやすいことになります。
このことは検査を実施する技師間の誤差を吸収してくれるだけでなく、正常血漿の違いによる差もある程度吸収してくれるという意味で、
Warfarinのモニタリング検査としては優れたものと言えます。
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PTが抱える問題点を解消するために考案されたPT−INR方式は、1982年にWHOに採用され、国際血液学標準化委員会、国際血栓止血学委員会によって
「経口抗凝固療法ガイドライン」(1984年)が提示されました。
このガイドラインにのっとってISI/INRシステムの普及が提唱され、日本でも1985年に紹介されましたが、
TTが広く普及していたことと、施設間差にもとづく混乱がなかったことから新システムへの関心が上がらなかったものと思われます。
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ISI/INRシステムの特徴は、試薬力価(ISI)を試薬ごとに設定することで、試薬によって生じる差を解消するというものです。
このシステムを有効に機能させるためには、絶対的な標準が必要になります。これにはヒト脳由来の組織トロンボプラスチンを一次国際標準品としてWHOが定め、
さらにこれを基準としてヒト、ウサギ、ウシなどの組織トロンボプラスチンのISIを求めた二次国際標準品を設定します。
試薬の製造業者はこの二次国際標準品を用いて自社試薬のISIを設定します。
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その試薬を用いて凝固時間(秒)を測定し、被検血漿と正常血漿の比を算出し、試薬のISI値を乗じてPT−INR値とします。
この計算式には測定誤差も含まれるため、ISI値は1が理想で、1.5までが許容範囲とされ、各試薬メーカーともこの範囲になるように製造されています。
1986年、INR研究会によって試薬メーカー4社の事業協力のもとでサーベイが実施され、4社の試薬間の互換性はINRが最も高いことが確認されました。
試薬力価(ISI)の導入によって、試薬間差の解消はほぼ完成されたように見えますが、測定機器による差も指摘され、現在では機器ごとにISIを設定するようになりました。
ただINR方式の問題点として、測定比を算出するための標準血漿についてはまだ標準化がなされていないことがあります。さらに試薬ごとに設定されたISI値の信頼性については各社にお任せの状況にあり、
検査する側にとっても標準血漿の標準化が確立されない限り、その確認に手が出せないのが現状です。
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検査する側にとっての問題としては、INR方式はあくまでも抗凝固療法のモニターのために考案された方式で、肝疾患や出血性疾患などの検体には対応できません。
現在のように測定機器の自動化が進んだ状況では、従来の指標プラスINRとして報告せざるを得ないという事情があります。
また、Warfarin療法の治療域についても、日本ではまだ確定されていないのが現状です。参考までに欧米ではほとんどの適応で2.0〜3.0が推奨されています。
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測定上最も重要なのが採血時です。針を刺した瞬間に組織トロンボプラスチンと接触し、凝固反応が始まっているからです。
従って採血後できるだけすみやかに抗凝固剤と混和する必要があります。
医療現場では複数の採血管に採る機会が多いのですが、その場合は凝固検査用の採血管に真っ先に採るべきだということです。
ただし、これは注射器を使って採血した場合で、真空採血による場合は、最初の穿刺時に組織トロンボプラスチンが採血管内に流れ込んできますので、2本目に採るべきだと言われています。
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また採血量も重要で、抗凝固剤が液体であるため採血量が規定量に達しないと、その分薄められてしまい正確な結果が得られなくなります。
グラフは採血量による凝固活性(%)の変化を理論上の計算値で表したものですが、実際には正常検体では余力があり多少採血量が少なくても結果に影響を及ぼしませんが、
低値を示す検体では理論値より悪くなる傾向があるように思います。これは生化学検査の酵素活性と違い、
いくつもの凝固因子が関係する凝固チームとしての活性を測っているためだと考えています。
さて、真空採血管は真空採血時の血圧を考慮して吸入するように設計されています。注射器を用いて採血した場合は、シリンジの摩擦により規定量吸引されませんので目視による採血量の確認が必要になります。
また小児や老人のように血管が細く、採血が難しいケースがあるのも確かで、自動機器を用いるようになり、以前に比べて必要な検体量も少なくて済むようになりましたから、
抗凝固剤の量を加減すれば採血量を半分にすることも可能になりますので、そういう時には採血する前に、検査担当者にぜひご相談頂ければと思います。
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採血後、よく転倒混和することも重要です。
検査室ではできるだけ早く遠心分離するようにしています。あまり長く全血のまま放置すると凝固時間が延長する傾向にあるからです。
その日に検査出来ない事情があり、検体を保存する場合は、遠心後血漿を分離し、ポリまたはシリコンコーティングされた試験管に入れて凍結保存します。
1週間程度の保存は可能だと思いますが、次に測定するまでの渡り舟と考えて、できるだけ速やかに測定するのが望ましいです。
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質疑応答
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Warfarinの投与量を決める手立てとして、PT-INR以外にいい指標となるもの(たとえばPIVKAを測定するなど)はあるのでしょうか?(薬剤師) |
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結論から申しますと、Warfarinが直接関与している凝固因子活性を測定しているという意味で、PT-INRが最も適していると思います。
PIVKAもWarfarinに直接関与していますが、凝固活性を推し量ることにはなりませんので凝固活性をコントロールするという意味での指標にはならないと思います。
今回、演題の目的から外れますのでご説明しませんでしたが、凝固系には外因系と内因系のふたつの系統に分かれています。
外因系は止血を、内因系は血管のメンテナンスをやっているわけですが、生体内では外因系も内因系も一緒くたに作動していると考えられますので、
外因系の検査であるPT-INRだけで凝固活性をコントロールするのが難しいのは、投げやりな言い方になりますが、ある意味当然と言えるのかも知れません。
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率直なところTTとPT-INR、どちらを用いるのがいいでしょう?(内科医師) |
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施設間差の是正を優先するという意味では選択肢はPT-INRしかないと思います。
自動化が進んだ状況ではTTもPT-INRも測定手技に差はありませんが、試薬が安定していると言う意味ではPT-INRに軍配が上がります。
TTはWarfarin Controlのために開発された検査法というだけあって、採血時の影響を受けやすいことに注意すれば決してPT-INRに劣る検査法だと私は思いません。
とくに用手法で扱いやすいのはTTの方だと思います。TTの試薬には検量線も添付されていますから、それをうまく利用すれば施設間差問題もある程度解消できるようには思います。
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